QC検定3級/第1章 手法分野

★★★ 出題の目安 3/3 計算・用語ともに頻出の土台。

データのまとめ方と基本統計量

平均・範囲・平方和・不偏分散・標準偏差は、すべて同じデータから順につながって出てきます。この順番で手を動かせるようになると、工程能力指数も管理図も同じ流れで解けます。

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音声は合成音声です。字幕をつけて見られます。内容はこのページの解説と同じで、続きから再生できます。

なぜ平均だけでは足りないのか

2つの工程があって、どちらも製品の重さの平均が100gだったとします。片方は99〜101gに収まっていて、もう片方は90〜110gまで散らばっている。平均は同じでも、品質としてはまったく別物です。

品質管理が見ているのは、この「散らばり」=ばらつきのほうです。だから平均を出したら、必ずばらつきも数値にします。3級で出てくる統計量は、ほとんどがばらつきを表すためのものです。

889296100104108112製品の重さ(g)工程A:平均100 g、99〜101 g に収まる工程B:平均100 g、90〜110 g に散らばる平均 100
平均が同じでも、ばらつきが違えば別の工程。品質管理が見ているのは散らばりのほう

計算の順番は決まっている

ばらつきを表す値はいくつもありますが、バラバラに覚える必要はありません。次の順番でつながっています。

平均 → 平方和 → 不偏分散 → 標準偏差。前の結果を次で使うので、途中で止まると先に進めません。逆に言えば、この順に手を動かせば必ず答えにたどり着きます。

平均 x̄ データの中心。合計 ÷ 個数。
範囲 R 最大値 − 最小値。いちばん簡単なばらつきの指標。
平方和 S 各データと平均の差を2乗して合計。ばらつきの「もと」。
不偏分散 V S ÷ (n − 1)。母集団のばらつきの推定値。
標準偏差 s √V。データと同じ単位に戻したばらつき。

例題:5個の製品の重さから標準偏差まで求める

製品の重さを5個測ったところ、102 g、98 g、101 g、99 g、100 g でした。

  1. ① 平均を出す x̄ = ( 102 + 98 + 101 + 99 + 100 ) ÷ 5 = 500 ÷ 5 = 100 (g)
  2. ② 範囲を出す R = 102 − 98 = 4 (g)
  3. ③ 平方和を出す S = 2² + (−2)² + 1² + (−1)² + 0² = 4 + 4 + 1 + 1 + 0 = 10 平均100との差をとってから2乗します。差がマイナスでも2乗すればプラスになるので、打ち消し合いません。
  4. ④ 不偏分散を出す V = 10 ÷ ( 5 − 1 ) = 10 ÷ 4 = 2.5 割るのは 5 ではなく 4(=n − 1)です。ここが最も間違えやすい箇所です。
  5. ⑤ 標準偏差を出す s = √2.5 ≒ 1.58 (g)
  6. ⑥ 変動係数を出す(必要なとき) CV = 1.58 ÷ 100 × 100 ≒ 1.6 (%) 平均の大きさが違うデータどうしでばらつきを比べたいときだけ使います。

答え:平均100 g、範囲4 g、平方和10、不偏分散2.5、標準偏差 約1.58 g

よくある間違い:不偏分散を n で割ってしまう間違いが多発します。10 ÷ 5 = 2 として標準偏差1.41と答えると不正解です。

電卓では平方和をこう出すと速い

平均との差を1つずつ計算するのは、データが増えると大変です。実務でも試験でも、次の式のほうが速く計算できます。

S = Σx² − (Σx)² ÷ n

先ほどの例で確かめてみます。Σx² は 102² + 98² + 101² + 99² + 100² = 10404 + 9604 + 10201 + 9801 + 10000 = 50010。(Σx)² ÷ n は 500² ÷ 5 = 250000 ÷ 5 = 50000。差は 50010 − 50000 = 10 で、先ほどと同じ値になりました。

データを一度入力するだけで済むので、桁数の多いデータではこちらが圧倒的に速くなります。

なぜ n − 1 で割るのか

手元にあるのは、母集団(作られたすべての製品)から取り出した一部=サンプルです。サンプルのばらつきは、母集団のばらつきより小さめに出る性質があります。

そのまま n で割ると、母集団のばらつきを実際より小さく見積もってしまいます。これを補正するために、少し小さい数(n − 1)で割って値を大きめに出します。これが不偏分散です。

3級では理由を問われることは多くありません。「n − 1 で割る」を取り違えないことのほうがはるかに重要です。

データの種類も押さえておく

計算に入る前に、扱っているデータがどちらなのかを見分けます。使える手法が変わります。

計量値 長さ・重さ・温度など、連続した値をとるデータ。X̄-R管理図はこちら。
計数値 不適合品の個数・キズの数など、数えられる値をとるデータ。p管理図・np管理図はこちら。
母集団 調べたい対象の全体。
サンプル(試料) 母集団から取り出した一部。ここから母集団を推定する。

メディアンと最頻値は、並べ替えれば出る

中心を表す値は平均だけではありません。データを小さい順に並べたときの真ん中の値をメディアン(中央値)、最も多く現れる値を最頻値(モード)といいます。どちらも計算というより、並べ替えと数え上げで求まります。

平均は外れ値に引っぱられます。5 人の年収で 1 人だけ桁違いに高ければ、平均は残り 4 人の実感から離れます。メディアンは並べた順番で決まるので、端の値がどれだけ大きくても動きません。外れ値を含むデータの中心を見たいときはメディアンを使います。

例題:メディアンと最頻値を求める

不適合品の個数を7日間数えたところ、日ごとに 12、15、11、15、13、18、15 個でした。

  1. ① 小さい順に並べる 11、12、13、15、15、15、18
  2. ② 真ん中の値を読む 7 個なので 4 番目。メディアン = 15 データ数が偶数なら真ん中の 2 つの平均を取ります。20、21、22、23、24、27 なら ( 22 + 23 ) ÷ 2 = 22.5 です。
  3. ③ 最も多い値を数える 15 が 3 回。最頻値 = 15
  4. ④ 平均も出して比べる ( 11 + 12 + 13 + 15 + 15 + 15 + 18 ) ÷ 7 = 99 ÷ 7 ≒ 14.1

答え:メディアン 15 個、最頻値 15 個、平均 約 14.1 個

よくある間違い:並べ替えずに元の順番の真ん中を読むのは誤りです。この例ではたまたま同じ 15 になりますが、手順としては必ず並べ替えてから真ん中を取ります。

データの変換で桁を落とすと、手計算が速くなる

100.2、100.5、99.8 のように桁が大きく差が小さいデータは、そのまま2乗すると計算が重くなります。基準値 a を引いて単位 h で割った x′ = ( x − a ) ÷ h に変換してから計算し、最後に戻す方法をデータの変換といいます。

戻し方は2つだけです。平均は x̄ = a + h × x̄′、標準偏差は s = h × s′。平方和と分散は h² 倍になります。範囲 R も h 倍です。

例題:変換してから平均と標準偏差を求める

製品の長さが 100.2、100.5、99.8、100.1、100.4 mm でした。a = 100、h = 0.1 として変換します。

  1. ① 変換する x′ = ( x − 100 ) ÷ 0.1 → 2、5、−2、1、4
  2. ② 変換後の平均 x̄′ = ( 2 + 5 − 2 + 1 + 4 ) ÷ 5 = 10 ÷ 5 = 2
  3. ③ 変換後の平方和 S′ = ( 4 + 25 + 4 + 1 + 16 ) − 10² ÷ 5 = 50 − 20 = 30
  4. ④ 変換後の分散と標準偏差 V′ = 30 ÷ 4 = 7.5  s′ = √7.5 ≒ 2.739
  5. ⑤ 元の単位に戻す x̄ = 100 + 0.1 × 2 = 100.2 (mm)  s = 0.1 × 2.739 ≒ 0.274 (mm)

答え:平均 100.2 mm、標準偏差 約 0.274 mm

よくある間違い:標準偏差を戻すときに a を足してしまう間違いがあります。a は位置をずらしただけなので、ばらつきには影響しません。足すのは平均だけ、h を掛けるのは平均と標準偏差の両方です。

サンプリングには必ず誤差が残る

母集団のすべてを測ることはできないので、一部をサンプルとして取り出します。この取り出す行為がサンプリングです。サンプルから母集団を推定する以上、サンプルの取り方で結果は変わります。

同じ母集団から取っても、サンプルごとに平均や標準偏差は少しずつ違います。この違いをサンプリング誤差といいます。測定器のずれや読み取りのばらつきによる測定誤差とは別のもので、測定が完璧でもサンプリング誤差はゼロになりません。データの誤差の分散は、サンプリング誤差の分散と測定誤差の分散の和になります。

サンプリング誤差を小さくする基本は、母集団のどの部分も同じ確率で選ばれるように取ることです。これをランダムサンプリングといいます。取りやすい上のほうだけ、最初のロットだけ、という取り方は、母集団を代表しないサンプルになります。

サンプリングの種類は2級の範囲ですが、3級でも「ランダム」の意味を問う形で出ます。名前と取り方をまとめておきます。

単純ランダムサンプリング 乱数表やサイコロで、母集団全体から無作為に取る。基本形。
2段サンプリング まず箱をランダムに選び、選んだ箱の中から製品をランダムに取る。
層別サンプリング 母集団を機械別・ロット別などの層に分け、各層からランダムに取る。
集落サンプリング 母集団をいくつかの集落(かたまり)に分け、いくつかの集落を選んでその全部を調べる。
系統サンプリング 時間順や並び順に、一定の間隔で取る。周期的な変動があると偏る。

よくある質問

不偏分散と分散は違うものですか?

分けて考えてください。平方和を n で割ったものを標本分散、n − 1 で割ったものを不偏分散といいます。QC検定で単に「分散」といったときは、母集団を推定する場面なので n − 1 で割る不偏分散を指すのが基本です。

範囲と標準偏差はどちらを使えばよいですか?

範囲は計算が簡単ですが、最大値と最小値だけで決まるため外れ値1つで大きく動きます。データ数が少ないとき(X̄-R管理図のように4〜5個の群)は範囲、データ数が多いときは標準偏差、と使い分けます。

変動係数は何のためにありますか?

平均の大きさが違うデータどうしで、ばらつきの大小を比べるためです。平均1000gで標準偏差10gと、平均10gで標準偏差5gでは、後者のほうが相対的にばらついています。標準偏差だけを見ると逆に見えてしまいます。

読んだ内容が身についた?(確認問題3問)

選択肢を押すと、その場で正誤と解説が出ます。間違えた問題は学習マップに残ります。

  1. Q1

    5個の測定値 10, 12, 14, 16, 18 の算術平均はいくらか。

    答えと解説を見る

    正解:2 14

    合計は10+12+14+16+18=70。算術平均は合計÷データ数=70÷5=14です。 ここで求めた平均は、この後の偏差・平方和・標準偏差の計算の出発点になります。平均を間違えるとその先がすべてずれるので、最初に検算しておくと安全です。

    問題番号 3-shuhou-005(誤りに気づいたらお知らせください)

  2. Q2

    データ 8, 3, 5, 9, 6 の範囲(レンジ R)はいくらか。

    答えと解説を見る

    正解:3 6

    範囲 R = 最大値 − 最小値 = 9 − 3 = 6。ばらつきを表す簡易な尺度です。 範囲は最大値と最小値だけで決まるため計算は簡単ですが、外れ値1つで大きく動きます。データ数が多いときは標準偏差のほうが安定した指標です。X̄-R管理図で範囲を使うのは、群のデータが4〜5個と少ないためです。

    問題番号 3-shuhou-006(誤りに気づいたらお知らせください)

  3. Q3

    品質管理における「母集団」と「サンプル(試料)」の関係の説明として正しいものはどれか。

    答えと解説を見る

    正解:1 サンプルは母集団から抜き取った一部であり、サンプルを調べて母集団の状態を推測する

    母集団は判断の対象となる集団全体、サンプルはそこから抜き取った一部です。抜取検査では少数のサンプルから母集団の状態を推測します。 「母集団はサンプルの一部」は関係が逆で、「常に同じ大きさ」なら抜き取る意味がありません。全数を調べるならそれは母集団そのものを調べたことになり、サンプルではなくなります。

    問題番号 3-shuhou-007(誤りに気づいたらお知らせください)

読んだあとにやること

読んで分かった気になっても、手を動かすと止まります。この分野の練習問題で確かめてください。

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解説と例題は学習用に当サイトが作成したものです。例題の数値はすべてオリジナルで、 過去問題(日本規格協会の著作物)の本文・選択肢・数値は使用していません。