QC検定2級/第1章 手法分野

★★★ 出題の目安 3/3 2級の最重要かつ差がつく領域。

検定と推定の手順

検定は「差がない」と仮定して、そのもとで観測値がどれだけ珍しいかを数値にする作業です。手順は5段階で固定されていて、母分散が既知か未知かで使う分布が変わるだけです。推定は同じ計算を逆向きに使います。

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検定は5つの手順で必ず同じ形になる

2級の手法分野で最も差がつくのがこの分野です。理由は単純で、計算そのものは割り算1回なのに、手順を省くと答えが合わないからです。

手順は次の5つです。①仮説を立てる → ②有意水準を決める → ③検定統計量を計算する → ④棄却限界と比べる → ⑤結論を書く。どの検定でも順番は変わりません。

帰無仮説 H₀ 「差がない」「変わっていない」と仮定する側。検定はこれを棄却できるかを調べる。
対立仮説 H₁ H₀が棄却されたときに採用する主張。「違う」(両側)か「大きい/小さい」(片側)か。
有意水準 α H₀が正しいのに棄却してしまう確率の上限。5%か1%を計算前に決める。
検定統計量 観測値と仮説の差を、ばらつきの単位で測り直した値。u₀・t₀・F₀など。
棄却限界 統計量がこの値を超えたらH₀を捨てる、という境界。分布表から引く。

母分散が分かっているときは正規分布を使う

工程の標準偏差σが過去のデータから分かっている場合、標本平均のばらつきは σ ÷ √n です。この値で差を割ると、標準正規分布に従う u₀ になります。

−1.9601.96u₀ = 2.5棄却域 2.5%棄却域 2.5%H₀ を棄却しない範囲両側5%:u₀ が ±1.96 の外に出たら H₀ を棄却する。例題の 2.5 は外側
両側検定の棄却域。例題の u₀ = 2.5 は 1.96 の外側なので H₀ を棄却する

例題:調整後の工程で平均がずれたか(σ既知)

ある部品の長さは、目標値 50.0 mm、工程の標準偏差 σ = 0.8 mm で安定していました。設備を調整した後に 16 個を測ったところ、平均は 50.5 mm でした。平均は変わったといえますか(有意水準 5%)。

  1. ① 仮説を立てる H₀:μ = 50.0  H₁:μ ≠ 50.0(両側) 「変わったか」なので方向を決めず両側にします。
  2. ② 有意水準を決める α = 0.05
  3. ③ 検定統計量を計算する u₀ = ( 50.5 − 50.0 ) ÷ ( 0.8 ÷ √16 ) = 0.5 ÷ 0.2 = 2.5 分母は σ ではなく σ ÷ √n です。ここで √n を忘れると 0.625 になり結論が逆転します。
  4. ④ 棄却限界と比べる 両側 5% の限界値は 1.96。 |u₀| = 2.5 > 1.96
  5. ⑤ 結論 H₀を棄却する。平均は 50.0 mm から変わったといえる。

答え:u₀ = 2.5 で有意水準 5% で有意。調整後の平均は目標値からずれている

よくある間違い:「棄却できない」を「差がないことが証明された」と書かないでください。棄却できないのは、差があるとは言い切れなかっただけです。

母分散が分からないときは t 分布に変わる

実務では σ が分からないことのほうが多く、そのときは標本から求めた標準偏差 s を代わりに使います。s には推定の誤差が含まれるので、正規分布より裾の広い t 分布で判定します。

違いは2つだけです。分母が σ から s に変わること、そして限界値を t 表から自由度 n − 1 で引くことです。

例題:σが分からない場合の同じ検定

同じ工程で、σ は不明とします。9 個を測ったところ、平均 50.5 mm、標本の標準偏差 s = 0.9 mm でした。平均は 50.0 mm から変わったといえますか(有意水準 5%)。

  1. ① 検定統計量を計算する t₀ = ( 50.5 − 50.0 ) ÷ ( 0.9 ÷ √9 ) = 0.5 ÷ 0.3 ≒ 1.67
  2. ② 自由度を出す φ = n − 1 = 9 − 1 = 8
  3. ③ t 表から限界値を引く t(8, 0.05)(両側)= 2.306 同じ 5% でも、正規分布の 1.96 より大きい値になります。データが少ないほど限界値は大きくなります。
  4. ④ 比べて結論 |t₀| = 1.67 < 2.306 → H₀は棄却できない

答え:t₀ ≒ 1.67 で有意ではない。平均が変わったとは言い切れない

よくある間違い:σ既知の例題と数値はほぼ同じなのに結論が変わりました。データが 16 個から 9 個に減り、σ を推定で置き換えたぶん、判定が慎重になったためです。

推定は、検定の式を区間に書き直したもの

検定が「基準値と違うか」を答えるのに対し、推定は「母平均はどのあたりにあるか」を答えます。使う数字は同じで、標本平均の両側に限界値 × 標準誤差の幅をとります。

例題:母平均の 95% 信頼区間(σ既知)

最初の例題と同じデータです。σ = 0.8、n = 16、x̄ = 50.5。母平均の 95% 信頼区間を求めます。

  1. ① 標準誤差を出す σ ÷ √n = 0.8 ÷ 4 = 0.2
  2. ② 幅を出す 1.96 × 0.2 = 0.392
  3. ③ 区間にする 50.5 ± 0.392 → 50.108 〜 50.892(mm)

答え:50.11 〜 50.89 mm。この区間に目標値 50.0 が入っていない

よくある間違い:区間に 50.0 が含まれないことと、検定で H₀ が棄却されたことは同じ内容です。検定と推定は別の道具ではなく、同じ計算の表と裏です。

2つの誤りは、どちらを避けたいかで有意水準が決まる

検定は確率で判断するので、必ず間違える可能性があります。間違え方は2種類あり、片方を減らすともう片方が増えます。

第一種の誤り(α) 本当は差がないのに「差がある」と判定する。あわて者の誤り。有意水準そのもの。
第二種の誤り(β) 本当は差があるのに「差があるとは言えない」とする。ぼんやり者の誤り。
検出力(1 − β) 本当に差があるときに、正しく差を検出できる確率。n を増やすと上がる。

分布の使い分けは、何を検定するかで決まる

2級では母平均以外の検定も出ます。どの分布を使うかを整理しておくと、問題文を読んだ時点で式が決まります。

母平均(σ既知) 正規分布。u₀ = (x̄ − μ₀) ÷ (σ ÷ √n)
母平均(σ未知) t 分布、自由度 n − 1。t₀ = (x̄ − μ₀) ÷ (s ÷ √n)
2つの母平均の差(σ未知・等分散) t 分布、自由度 n₁ + n₂ − 2。プールした分散を使う。
母分散 χ² 分布、自由度 n − 1。χ₀² = S ÷ σ₀²
2つの母分散の比 F 分布。F₀ = V₁ ÷ V₂(大きいほうを分子に)
母不適合品率 n が大きければ正規近似。u₀ = (p − p₀) ÷ √( p₀(1 − p₀) ÷ n )

計数値の検定は、不適合品率も個数も正規近似で u₀ を作る

計量値の検定が母平均と母分散を扱うのに対して、計数値の検定は不適合品率・不適合品数・欠点数を扱います。手順は同じ5段階で、検定統計量を作るときの標準偏差が二項分布・ポアソン分布の式に変わるだけです。n が大きければ正規分布で近似できるので、限界値は 1.96 や 1.645 をそのまま使います。

2つの母不適合品率を比べるときは、2つのデータをまとめた不適合品率 p̄ で標準偏差を作ります。母不適合品数(ポアソン分布)では、分散が平均に等しいので標準偏差は √(期待される個数) です。

母不適合品率 P の検定 u₀ = ( p − P₀ ) ÷ √( P₀ ( 1 − P₀ ) ÷ n )。p = x ÷ n。
母不適合品率 P の推定 p ± 1.96 √( p ( 1 − p ) ÷ n )(95% 信頼区間)。
2つの母不適合品率の差 u₀ = ( p₁ − p₂ ) ÷ √( p̄ ( 1 − p̄ ) ( 1 ÷ n₁ + 1 ÷ n₂ ) )。p̄ = ( x₁ + x₂ ) ÷ ( n₁ + n₂ )。
母不適合品数(ポアソン) u₀ = ( x − m₀ ) ÷ √m₀。m₀ は仮説のもとで期待される個数。
2つの母不適合品数 u₀ = ( x₁ − x₂ ) ÷ √( x₁ + x₂ )。同じ大きさの範囲を比べるとき。

例題:不適合品率が 5% から変わったか

不適合品率 5% で安定していた工程を改造した後、400 個を検査したところ不適合品が 30 個でした。不適合品率は変わったといえますか(有意水準 5%)。あわせて改造後の母不適合品率の 95% 信頼区間を求めます。

  1. ① 仮説を立てる H₀:P = 0.05  H₁:P ≠ 0.05(両側)
  2. ② 標本の不適合品率 p = 30 ÷ 400 = 0.075
  3. ③ 検定統計量 u₀ = ( 0.075 − 0.05 ) ÷ √( 0.05 × 0.95 ÷ 400 ) = 0.025 ÷ 0.0109 ≒ 2.29 分母の中は仮説の P₀ = 0.05 で作ります。標本の p = 0.075 を入れるのは推定のときです。
  4. ④ 判定 |u₀| = 2.29 > 1.96 → H₀ を棄却。不適合品率は変わった(この場合は悪化した)といえる
  5. ⑤ 95% 信頼区間 0.075 ± 1.96 × √( 0.075 × 0.925 ÷ 400 ) = 0.075 ± 1.96 × 0.01317 = 0.075 ± 0.0258 → 0.049 〜 0.101

答え:u₀ ≒ 2.29 で有意。改造後の母不適合品率は 95% 信頼区間で 4.9% 〜 10.1%

よくある間違い:検定では P₀、推定では p と、分母に入れる値が違います。この例では検定は棄却されたのに、信頼区間(4.9%〜10.1%)には 0.05 がわずかに入っています。母平均のときのように検定と区間がぴったり対応しないのは、分母の作り方が違うためです。

分割表は「期待度数とのずれ」を χ² で見る

機械 A と B で不適合品率に差があるか、のように、2つ以上の分類の組合せを表にしたものが分割表です。行と列が無関係(独立)だと仮定したときの期待度数を計算し、実際の度数とのずれを合計して χ² 分布で判定します。

期待度数は(行の合計 × 列の合計)÷ 総数で出します。自由度は(行の数 − 1)×(列の数 − 1)で、2 × 2 の表なら 1 です。

例題:2 台の機械で不適合品率に差があるか

機械 A の 200 個のうち不適合品 12 個、機械 B の 200 個のうち不適合品 4 個でした。機械によって不適合品率が違うといえますか(有意水準 5%)。

  1. ① 期待度数を出す 不適合の合計 16 個を 2 台で分けるので、不適合の期待度数は各 8 個、適合の期待度数は各 192 個
  2. ② ずれの 2 乗 ÷ 期待度数を合計する χ₀² = ( 12 − 8 )² ÷ 8 + ( 4 − 8 )² ÷ 8 + ( 188 − 192 )² ÷ 192 + ( 196 − 192 )² ÷ 192 = 2 + 2 + 0.083 + 0.083 ≒ 4.17
  3. ③ 自由度と限界値 φ = ( 2 − 1 ) × ( 2 − 1 ) = 1  χ²( 1, 0.05 ) = 3.84
  4. ④ 判定 4.17 > 3.84 → H₀(機械と不適合は無関係)を棄却。機械によって不適合品率が違うといえる

答え:χ₀² ≒ 4.17 で有意。機械 A のほうが不適合品率が高い

よくある間違い:適合側のセルを忘れて不適合側の 2 つだけを足す誤りがあります。分割表の χ² はすべてのセルを足します。この例では適合側の寄与は小さいですが、期待度数が小さいときは効いてきます。

よくある質問

両側検定と片側検定はどう決めますか?

問題文の目的で決めます。「変わったか」「差があるか」なら両側、「大きくなったか」「改善したか」のように方向が指定されていれば片側です。片側にすると同じ 5% でも限界値が 1.96 から 1.645 に下がるので、決めてから計算します。

p 値が出てきたときはどう判定しますか?

p 値が有意水準より小さければ棄却です。p = 0.02 で α = 0.05 なら棄却、α = 0.01 なら棄却できません。p 値は「H₀ が正しいときに、この値以上に極端な結果が出る確率」です。

なぜ σ が分かっていると正規分布で、分からないと t 分布なのですか?

s は標本から求めた推定値なので、σ より当てにならない分だけ判定を慎重にする必要があります。t 分布は正規分布より裾が広く、その慎重さを織り込んだ分布です。n が大きくなると s は σ に近づくので、t 分布も正規分布に近づきます。

読んだ内容が身についた?(確認問題3問)

選択肢を押すと、その場で正誤と解説が出ます。間違えた問題は学習マップに残ります。

  1. Q1

    統計的仮説検定で、最初に「差がない・効果がない」と仮定する仮説を何というか。

    答えと解説を見る

    正解:1 帰無仮説

    検定ではまず「差がない」とする帰無仮説(H0)を立て、それを棄却できるかを調べます。棄却されたときに採用する主張が対立仮説(H1)です。

    問題番号 2-kt-001(誤りに気づいたらお知らせください)

  2. Q2

    帰無仮説が正しいのに、誤って棄却してしまう誤りを何というか。

    答えと解説を見る

    正解:1 第一種の誤り(あわて者の誤り)

    第一種の誤り(αで表す)は、本当は差がないのに「差がある」と判定してしまう誤りです。有意水準は第一種の誤りを犯す確率の上限です。

    問題番号 2-kt-002(誤りに気づいたらお知らせください)

  3. Q3

    帰無仮説が誤っているのに、棄却できず採択してしまう誤りを何というか。

    答えと解説を見る

    正解:2 第二種の誤り

    第二種の誤り(βで表す)は、本当は差があるのに「差がない」と見逃してしまう誤りです。1−βを検出力といいます。

    問題番号 2-kt-003(誤りに気づいたらお知らせください)

読んだあとにやること

読んで分かった気になっても、手を動かすと止まります。この分野の練習問題で確かめてください。

この分野の練習問題 全17問を解く 公式をまとめて確認する 統計数表を引く

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解説と例題は学習用に当サイトが作成したものです。例題の数値はすべてオリジナルで、 過去問題(日本規格協会の著作物)の本文・選択肢・数値は使用していません。