QC検定2級/第1章 手法分野
★★☆ 出題の目安 2/3 分布の性質と簡単な確率計算。(3級の範囲として)
二項分布とポアソン分布の使い分け
3級の統計は正規分布(計量値)が中心でした。2級では不適合品の個数や欠点数といった計数値を扱うために、二項分布とポアソン分布が加わります。どちらも平均と分散が式で決まるので、覚えることは式2本と近似の条件だけです。
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計数値には正規分布が使えない
不適合品の個数は 0, 1, 2 … と飛び飛びの値しかとりません。長さや重さのように連続していないので、正規分布をそのまま当てはめることはできません。
2級では、個数を扱う分布が2つ加わります。「n 個のうち何個が不適合か」を表す二項分布と、「一定の範囲に欠点がいくつ現れるか」を表すポアソン分布です。
| 二項分布 | n 個調べて不適合品が x 個出る確率。n と p で決まる。不適合品率・不適合品数の管理図の土台。 |
|---|---|
| ポアソン分布 | 一定の面積・時間・製品あたりの欠点数 x の分布。平均 λ だけで決まる。欠点数の管理図の土台。 |
二項分布は平均 np、分散 np(1 − p)
式は2本だけです。平均は n × p、分散は n × p × (1 − p)。標準偏差は分散の平方根です。確率そのものを求めるときは、組合せの数に p と (1 − p) の累乗を掛けます。
例題:不適合品率 4% の工程から 50 個抜き取ったとき
不適合品率 p = 0.04 で安定している工程から n = 50 個を抜き取ります。不適合品数の平均・標準偏差と、不適合品が 1 個以下である確率を求めます。
- ① 平均を出す np = 50 × 0.04 = 2.0(個)
- ② 分散と標準偏差を出す np(1 − p) = 50 × 0.04 × 0.96 = 1.92 √1.92 ≒ 1.39(個) 分散と標準偏差を取り違えないでください。問われているのがどちらかを必ず確かめます。
- ③ 0 個の確率 P(0) = 0.96⁵⁰ ≒ 0.130
- ④ 1 個の確率 P(1) = 50 × 0.04 × 0.96⁴⁹ ≒ 0.271 「50 個のうちどれか 1 個」なので 50 通りあり、50 を掛けます。
- ⑤ 足す P(1 個以下) = 0.130 + 0.271 = 0.401
答え:平均 2.0 個、標準偏差 約 1.39 個、1 個以下の確率 約 0.40
よくある間違い:試験で 50 乗を手計算することはほとんどありません。出るのは平均・分散の式と、「p が小さく n が大きいときはポアソン分布で近似できる」という判断です。
p が小さく n が大きければ、ポアソン分布で近似できる
ポアソン分布は平均 λ だけで形が決まり、分散も λ に等しいのが特徴です。二項分布で p が小さく n が大きいとき、λ = np と置けばポアソン分布でほぼ同じ確率が出ます。
上の例題を λ = 2 のポアソン分布で計算すると、P(0) = e⁻² ≒ 0.135、P(1) = 2e⁻² ≒ 0.271、合わせて 0.406 です。二項分布の 0.401 とほとんど変わりません。
ポアソン分布が本領を発揮するのは、n が定まらない場面です。「1 ㎡の塗装面にキズが何個あるか」には n がありません。この欠点数を扱えるのがポアソン分布です。
| ポアソン分布の平均 | λ |
|---|---|
| ポアソン分布の分散 | λ(平均と同じ)。標準偏差は √λ。 |
| 二項分布からの近似 | p が小さく n が大きいとき、λ = np とおく。 |
n が大きければ、正規分布でも近似できる
二項分布は n が大きくなると左右対称に近づき、平均 np・標準偏差 √np(1 − p) の正規分布で近似できます。p 管理図や np 管理図の管理限界を「平均 ± 3σ」で引けるのは、この近似があるからです。
たとえば n = 400、p = 0.1 なら平均 40、標準偏差 √(400 × 0.1 × 0.9) = 6 です。不適合品が 52 個以上出る確率は、u = (52 − 40) ÷ 6 = 2.0 で、正規分布表から約 2.3% と読めます。
分散の加法性:足しても引いても、分散は足す
部品 A と部品 B を重ねた高さのばらつきはいくつか。この問いに答えるのが分散の加法性です。独立な2つの値を足したとき、平均は平均の和、分散は分散の和になります。引き算のときも、平均は差になりますが分散は和のままです。標準偏差は足せません。
期待値と分散の計算規則としてまとめると、定数 a を掛けた ax の平均は a 倍、分散は a² 倍になります。この a² を忘れて a 倍にする誤りが多いので、分散は「2乗の世界」と覚えておきます。
標本平均の分散が σ² ÷ n になるのも、この規則から出ます。n 個の和の分散は nσ²、それを n で割った平均の分散は nσ² ÷ n² = σ² ÷ n です。n を増やすほど平均のぶれが小さくなり、母平均に近づいていく性質を大数の法則といいます。
| x + y の平均と分散 | 平均 μx + μy、分散 σx² + σy² |
|---|---|
| x − y の平均と分散 | 平均 μx − μy、分散 σx² + σy²(引き算でも足す) |
| a x の平均と分散 | 平均 aμx、分散 a²σx² |
例題:2 つの部品を重ねた高さのばらつき
部品 A の高さは平均 30.0 mm・標準偏差 0.3 mm、部品 B は平均 20.0 mm・標準偏差 0.4 mm で、互いに独立です。A と B を重ねた高さの平均と標準偏差、および A と B の高さの差の標準偏差を求めます。
- ① 重ねた高さの平均 30.0 + 20.0 = 50.0 (mm)
- ② 分散を足す 0.3² + 0.4² = 0.09 + 0.16 = 0.25
- ③ 標準偏差に戻す √0.25 = 0.5 (mm)
- ④ 差の標準偏差 分散は同じ 0.25 なので、標準偏差も 0.5 (mm)。平均は 30.0 − 20.0 = 10.0 (mm)
答え:重ねた高さ:平均 50.0 mm、標準偏差 0.5 mm。差:平均 10.0 mm、標準偏差 0.5 mm
よくある間違い:標準偏差を直接足して 0.3 + 0.4 = 0.7 とするのが定番の誤りです。足すのは分散で、最後に平方根を取ります。
標本平均の分布と中心極限定理
検定と推定の前提になる考え方です。母集団の標準偏差が σ のとき、大きさ n の標本の平均は、標準偏差 σ ÷ √n でばらつきます。データを増やすほど平均のぶれが小さくなる、という関係です。
さらに、母集団が正規分布でなくても、n が十分大きければ標本平均の分布は正規分布に近づきます。これが中心極限定理で、計数値のデータでも n を大きくとれば正規分布の道具が使える根拠になっています。
よくある質問
二項分布とポアソン分布のどちらを使うかは、どう見分けますか?
「n 個のうち何個」と数えられるなら二項分布、「一定の範囲にいくつ」で n が定まらないなら ポアソン分布です。不適合品数は二項分布、キズや欠点の数はポアソン分布、と覚えると管理図の使い分け(np・p 管理図と c・u 管理図)にもそのままつながります。
ポアソン分布の「平均と分散が等しい」はどう使いますか?
平均 λ が分かれば標準偏差は √λ です。欠点数の管理図(c 管理図)の管理限界が c̄ ± 3√c̄ になるのはこの性質からです。平均 4 なら標準偏差 2、と即答できるようにしておきます。
3級の正規分布の知識は2級でも使いますか?
使います。2級の検定・推定・管理図は、正規分布の標準化 u = (x − μ) ÷ σ と分布表の読み方が前提です。忘れていれば3級の正規分布の解説を先に読み直してください。
読んだ内容が身についた?(確認問題3問)
選択肢を押すと、その場で正誤と解説が出ます。間違えた問題は学習マップに残ります。
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Q1
試行回数 n、成功確率 p の二項分布に従う確率変数の期待値(平均)はどれか。
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正解:1 np
二項分布の期待値は np です。例えば不良率pの製品をn個取ったときの不良個数の期待値は np になります。
問題番号 2-st-001(誤りに気づいたらお知らせください)
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Q2
試行回数 n、成功確率 p の二項分布の分散はどれか。
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正解:2 np(1-p)
二項分布の分散は np(1-p) です。標準偏差はその平方根 √{np(1-p)} になります。
問題番号 2-st-002(誤りに気づいたらお知らせください)
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Q3
一定の時間・面積・製品あたりに、まれに発生する欠点の数などを表すのに用いられる分布はどれか。
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正解:1 ポアソン分布
ポアソン分布は、単位あたりにまれに発生する事象の個数(欠点数など)を表す分布で、c管理図・u管理図の基礎になります。
問題番号 2-st-003(誤りに気づいたらお知らせください)
読んだあとにやること
読んで分かった気になっても、手を動かすと止まります。この分野の練習問題で確かめてください。
関連する解説
解説と例題は学習用に当サイトが作成したものです。例題の数値はすべてオリジナルで、 過去問題(日本規格協会の著作物)の本文・選択肢・数値は使用していません。