QC検定2級/第1章 手法分野
★☆☆ 出題の目安 1/3 考え方と基本計算。
抜取検査と OC 曲線の読み方
抜取検査は「ロットの一部だけ調べて全体を判定する」ので、良いロットを落とす確率と悪いロットを通す確率が必ず残ります。この2つの確率を、ロットの不適合品率ごとに描いたのが OC 曲線です。曲線が読めれば、検査方式の良し悪しを数値で説明できます。
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音声は合成音声です。字幕をつけて見られます。内容はこのページの解説と同じで、続きから再生できます。
抜取検査の判定ルールは「n 個調べて c 個以下なら合格」
ロットからサンプル n 個を取り、不適合品の数を数えます。合格判定個数 c 以下なら合格、c + 1 個以上なら不合格。これが計数規準型一回抜取検査です。
n と c の2つの数字で検査方式が決まります。同じロットでも、n と c の組み合わせが違えば合格率は変わります。
| n | サンプルの大きさ。大きいほど判別力が上がるが、検査の手間が増える。 |
|---|---|
| c | 合格判定個数。0 なら1個でも不適合品があれば不合格。 |
| p | ロットの不適合品率。検査する側は知らない値。 |
| L(p) | 不適合品率 p のロットが合格する確率。OC 曲線の縦軸。 |
OC 曲線の値は二項分布で計算できる
不適合品率 p のロットから n 個取ったとき、不適合品が c 個以下になる確率が L(p) です。ロットが十分大きければ二項分布で近似できます。
例題:n = 20、c = 1 の検査方式の OC 曲線
サンプル 20 個を調べ、不適合品が 1 個以下なら合格とする検査方式です。ロットの不適合品率が 1%、5%、10%、20% のとき、それぞれの合格率を求めます。
- ① 合格する場合を書き出す 不適合品 0 個 または 1 個
- ② 式にする L(p) = (1 − p)²⁰ + 20 × p × (1 − p)¹⁹ 0 個の確率は全部が適合品の確率。1 個の確率は「20 個のうちどれか 1 個」なので 20 通りあり、20 を掛けます。
- ③ p = 0.01 を入れる L = 0.99²⁰ + 20 × 0.01 × 0.99¹⁹ ≒ 0.818 + 0.165 = 0.983
- ④ p = 0.05 を入れる L = 0.95²⁰ + 20 × 0.05 × 0.95¹⁹ ≒ 0.358 + 0.377 = 0.736
- ⑤ p = 0.10 を入れる L = 0.90²⁰ + 20 × 0.10 × 0.90¹⁹ ≒ 0.122 + 0.270 = 0.392
- ⑥ p = 0.20 を入れる L = 0.80²⁰ + 20 × 0.20 × 0.80¹⁹ ≒ 0.012 + 0.058 = 0.069
答え:合格率は p = 1% で 98.3%、5% で 73.6%、10% で 39.2%、20% で 6.9%。この4点を結ぶと右下がりの OC 曲線になる
よくある間違い:試験で 20 乗を手計算することはまずありません。出るのは「n や c を変えると曲線がどう動くか」「曲線のどこが α でどこが β か」です。計算はこの形を理解するためのものです。
α と β は曲線の2か所を読むだけ
生産者と消費者は、それぞれ違う品質水準を基準にしています。
生産者は「p₀ = 1% くらいのロットなら合格させてほしい」と考えます。ところが上の例では p = 1% でも 1.7% は不合格になります。この 1 − L(p₀) が生産者危険 α です。
消費者は「p₁ = 10% のロットは不合格にしてほしい」と考えます。ところが p = 10% でも 39.2% は合格してしまいます。この L(p₁) が消費者危険 β です。
この例の n = 20、c = 1 は、β が 39% と大きすぎます。消費者を守るには、n を増やすか c を減らして曲線を左に急にする必要があります。
| p₀(なるべく合格させたい水準) | 生産者側の基準。ここでの不合格率が α。 |
|---|---|
| p₁(なるべく不合格にしたい水準) | 消費者側の基準。ここでの合格率が β。 |
| α | 生産者危険。良いロットを落とす確率。 |
| β | 消費者危険。悪いロットを通す確率。 |
n と c を変えると曲線はこう動く
検査方式を設計するとは、α と β が目標以下になるように n と c を選ぶことです。動かし方の向きを覚えておきます。
| n を大きくする | 曲線が急になり、良いロットと悪いロットの判別力が上がる。α・β とも下がるが検査コストは増える。 |
|---|---|
| c を大きくする | 曲線が右にずれて全体に合格しやすくなる。α は下がるが β は上がる。 |
| c = 0 にする | 最も厳しい方式。1 個の不適合品でも不合格。α が大きくなりやすい。 |
| ロットの大きさ N | N が n に比べて十分大きければ、N を変えても曲線はほとんど変わらない。 |
計量規準型抜取検査は、測った平均と規格との距離で判定する
ここまでの計数規準型は、不適合品を数えて判定しました。長さや強度のように測れる特性なら、測定値の平均を使って判定するほうが少ないサンプルで済みます。これが計量規準型抜取検査(JIS Z 9003・JIS Z 9004)です。
上限規格 SU だけがある場合、サンプル n 個の平均 x̄ が SU − k σ 以下なら合格です。k は合格判定係数で、ロットの標準偏差 σ が既知のときは、p₀・p₁・α・β から n と k を表で引きます。平均が規格に近づくほど規格外れが増えるので、規格から k σ だけ内側に判定線を置く、という仕組みです。
例題:上限規格のある計量規準型
不純物の上限規格 SU = 10.0%、工程の標準偏差 σ = 0.2% は既知です。表から n = 8、k = 1.74 と決まりました。サンプル 8 個の平均が 9.6% のとき、ロットは合格ですか。
- ① 合格判定値を出す SU − k σ = 10.0 − 1.74 × 0.2 = 10.0 − 0.348 = 9.652 (%)
- ② 平均と比べる x̄ = 9.6 ≦ 9.652 → 合格
答え:合格。平均が 9.652% を超えていれば不合格
よくある間違い:規格 10.0 と平均 9.6 を直接比べて「規格内だから合格」とするのは誤りです。平均が規格内でも、ばらつきの分だけ規格外れの製品が含まれるので、k σ 分の余裕を要求します。
実務では AQL と調整型で運用する
毎回 α・β から n と c を設計するのは手間なので、実務では表から引きます。合格品質水準 AQL(なるべく合格させたい不適合品率の上限)を決めて、対応する検査方式を選びます。
調整型抜取検査では、供給者の実績に応じて「なみ検査」を基本に、品質が悪ければ「きつい検査」、良ければ「ゆるい検査」に切り替えます。実績が良い供給者ほど検査が軽くなる仕組みです。
抜取検査が向く場面、向かない場面
抜取検査は不適合品を一定の確率で見逃す方法です。それでも使うのは、全数検査が現実的でない場面があるからです。
| 向く | 破壊検査(調べると製品が壊れる)、ロットが大きく検査費用が高い、多少の不適合品混入が許容できる。 |
|---|---|
| 向かない | 1 個の不適合品も許されない安全部品、ロットが小さく全数検査が容易、不適合品の損失が検査費用より大きい。 |
よくある質問
OC 曲線は必ず右下がりですか?
はい。不適合品率が上がるほど合格しにくくなるので、必ず右下がりになります。p = 0 で L = 1(合格率 100%)、p = 1 で L = 0(合格率 0%)です。急か緩やかかが検査方式の判別力を表します。
ロットの大きさ N は計算に入らないのですか?
N が n に比べて十分大きい(目安として 10 倍以上)なら、二項分布の近似で N を無視できます。試験で「ロットの大きさを変えても OC 曲線はほとんど変わらない」と問われたら、この理由です。
平均出検品質 AOQ とは何ですか?
不合格ロットを全数選別して不適合品を取り除く方式で、検査後に流出する不適合品率の平均値です。p が小さいときは合格率が高いのでそのまま流出し、p が大きいと不合格になって選別されるので、AOQ は途中で最大値をとります。その最大値を AOQL といいます。
読んだ内容が身についた?(確認問題3問)
選択肢を押すと、その場で正誤と解説が出ます。間違えた問題は学習マップに残ります。
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Q1
抜取検査で、本来合格にすべき良いロットが不合格になってしまう確率を何というか。
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正解:1 生産者危険(α)
生産者危険(α)は、品質の良いロットが誤って不合格になる確率で、生産者にとって不利になります。
問題番号 2-as-001(誤りに気づいたらお知らせください)
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Q2
抜取検査で、本来不合格にすべき悪いロットが合格してしまう確率を何というか。
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正解:2 消費者危険(β)
消費者危険(β)は、品質の悪いロットが誤って合格する確率で、消費者(受入側)にとって不利になります。
問題番号 2-as-002(誤りに気づいたらお知らせください)
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Q3
横軸にロットの不良率、縦軸にロットの合格する確率をとり、抜取検査の特性を表す曲線を何というか。
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正解:1 OC曲線(検査特性曲線)
OC曲線(Operating Characteristic curve)は、ロットの品質(不良率)ごとの合格確率を表し、抜取方式の厳しさを評価できます。
問題番号 2-as-003(誤りに気づいたらお知らせください)
読んだあとにやること
読んで分かった気になっても、手を動かすと止まります。この分野の練習問題で確かめてください。
関連する解説
解説と例題は学習用に当サイトが作成したものです。例題の数値はすべてオリジナルで、 過去問題(日本規格協会の著作物)の本文・選択肢・数値は使用していません。